Skip to main content

第三十八話:デフレってなんだったの⁉ー市場原理に従わない市場のひずみ③ー


デフレの原因 

アルケーアカデミー社会の授業

一月前の夏の暑さが過ぎ去り、田園は黄金色に色を染め、季節は秋に移行した。半袖では朝夕は肌寒くなる季節がやって来ていた。

AI先生:前回は、デフレを説明、理解するための日本のバブル経済に陥る直前の国内状況と国際状況を説明しました。そして市場原理とは貿易により黒字国は購買力が強くなり、国の通貨は高くなる。それに対し赤字国は購買力が弱くなり、国の通貨は安くなる、ということを勉強しました。ここまでは良いですか?

想(ソウ)ちゃん、思惟(シイ)ちゃん:はい、先生。

AI先生:よろしい。デフレに苦しんだのは日本だけですが、世界各国の国々も低成長に苦しんだ時期がありました。2011年からコロナ前の2019年まで世界は低成長に苦しみました。GDP成長率はリーマンショック前の年平均4.3%から3.5%と大幅に下がったのです。

想(ソウ)ちゃん:その理由が国際要因?

AI先生:そうです。ここからは歴史的な検証が済んでいないため仮説要素を多く含むということを念頭に聞いてください。

中国の輸出総額推移

2000年   2492億ドル 世界シェア  3.8%

2005年   7620億ドル 世界シェア  7.3%

2010年 1兆5778億ドル   世界シェア  10.3% 

2015年 2兆2735億ドル   世界シェア  13.8%

AI先生:中国は2001年にWTOに加盟しそれから大幅に世界の輸出シェアを伸ばしていきました。

想ちゃん:すごい輸出額の伸び!2010年には世界シェア10%を超えたんだね。でも、日本は9%を超えたあたりでプラザ合意が行われて円高になった。あれ?

思惟ちゃん:確かに、そうね。先生、中国人民元はドルペッグ制よね?日本のように完全変動相場制への移行は行われなかったの?

AI先生:はい、では次に人民元について学びましょう。

人民元の為替制度の変遷

1994年以降

人民元は事実上の ドルペッグ制(固定相場制) を採用。1ドル=約8.28元で長く固定されていました。

2005年7月

中国はドルペッグをやめ、「管理変動相場制(管理フロート制)」 に移行。対ドルで一度2.1%切り上げ以後は「通貨バスケット制」を参考に、ドル・ユーロ・円など複数通貨を加味してレートを決定ただし実際にはドルの比率が大きく、依然としてドルとの連動性が強い

2008年リーマンショック後

世界的混乱を受けて、一時的に再びドルペッグに近い運用に戻す。

2010年以降

再び「管理変動相場制」に復帰。現在も完全な変動相場制ではなく、中国人民銀行が毎日「基準値(中間レート)」を発表し、その上下一定幅(当初±0.3%、現在は±2%)でしか動けない仕組み。

日本との比較

日本(1980年代)

完全変動相場制。市場の需給で円高が急激に進行 → プラザ合意でさらに円高圧力。

中国(2000年代以降)

管理変動相場制。政府・中央銀行が強く介入して元高を抑制。輸出競争力を維持するため、自由な変動は認めなかった。

想ちゃん:完全変動相場制へ移行されずに、通貨が市場原理に従わずに安く放置され、中国製の安い商品が世界中にまん延した。

思惟ちゃん:それで世界の様々な国で低成長になった?ってこと?

AI先生:はい、概ねその通りです。

想ちゃん:なるほど、つまり「市場原理が働かない状態」が続いたから、世界全体の成長の歪みにつながったんだね。

思惟ちゃん:そうすると、これは「中国の成功」でもあるけど「世界の停滞」の一因でもある、ってことかしら。

AI先生:その通りです。ここから先は「国際政治経済」の領域になります。アメリカやEUが中国に対して「為替操作国」と批判したのも、この構造が背景にあります。

結論:

中国が人民元を市場原理に委ねず“安く固定”したことで、輸出が爆発的に伸び、世界の成長バランスに歪みを生んだ。

日本のデフレは日本だけの問題ではなかったことがお判りいただけましたか?

関連テーマ:

第三十三話:デフレってなんだったの⁉ー市場原理に従わない市場のひずみ①ー

1990〜2010年代、世界は“低インフレ常態化”の時代に沈んでいた。日本のデフレ、欧州のマイナス金利、米国の弱々しい物価上昇──。だが、コロナと世界の分断がその均衡を壊し、物価の時代は新たな局面へ。次にインフレを決めるのは、いったい何なのか──。

第三十七話:デフレってなんだったの⁉ー市場原理に従わない市場のひずみ②ー

ドル高に揺れる世界──プラザ合意が日本を急激な円高へ導き、金融緩和がバブルの火種となった。

参考文献:

  • 広田堅志「1994年からWTO加盟までの中国の為替管理」
    『広島経済大学経済研究』第35巻第4号, 2013年
    PDF全文はこちら
  • 関志雄『未完の人民元改革―国際通貨への道』文真堂, 2020年
    (人民元の管理変動相場制や国際化の課題を体系的に整理)
    書評・概要: J-STAGE 書評記事



Comments

人気の投稿

AIエッセー:羨望という名の定期刊行物

私はU―NEXTのサブスクリプションサービスに加入している。このサービスには映画やアニメの動画だけでなく、雑誌の読み放題も付いている。就業中は出張の移動時間くらいでしか雑誌を読むことがなかったが、退職して時間ができたことで、ふと雑誌コーナーを覗いてみた。 その中で『日経マネー』の表紙が目に留まった。さっそくタブレットで開いてみると、個人投資で大儲けしている人たちの特集が組まれている。何か参考になる技があるかもしれないと思い読み進めたが、登場する成功者たちの資産額は、普通の感覚からすれば完全に別世界だ。投資界隈では10億円越えなど珍しくないのだろう。 しかし、結論から言えば、彼らの手法はほとんど参考にならなかった。詳細は省くが、ある程度の資産を築いた今の私から見ても、実用性は限りなくゼロに近い。正直、お金系YouTubeを見ている方がよほど再現性のある情報を得られる。 タブレットを閉じながら、私はある仮説に行き着いた。 そもそも雑誌というメディアは、最初から「実用的な情報」を届けるためのものではなかったのではないか。 雑誌とは、娯楽と羨望をパッケージにして読者に届ける“ファンタジー装置”だったのではないか。 ファッション誌を思い浮かべれば分かりやすい。誌面を飾る服は、決して買えないほど高額ではないが、日常的に買い続けるには非現実的だ。しかも、あれは抜群のプロポーションを持つモデルが着るからこそ映える。普通の人間が同じ服を着ても、誌面の世界観を再現することは到底できない。 投資雑誌も、構造はまったく同じ 10億円を動かす大富豪の成功譚は、読者に「いつかは自分もこうなれるかも」という一瞬の夢を与える。だが実際には、手の届かない存在への羨望を刺激するエンターテインメントに過ぎない。そして雑誌の本質は、情報提供ではなく、その夢の余韻の中で誌面に掲載された商品やサービス――ファッション誌ならブランド服、投資誌なら証券会社や金融商品――へ読者を誘導するための、 洗練されたカタログ だったのだと思う。 かつては、それでも成立していた。情報の流通経路が限られていた時代、私たちはその“カタログ”をありがたい情報源として買い求めていた。 しかし時代は変わった。 今や本当に実用的で、今日すぐ使える剥き出しの情報は、SNSや動画プラットフォームを通じて個人間でリアルタイムに共有される。市場の...

第十八話:地球がサウナ⁉ー地球温暖化と人類の挑戦ー

温暖化への挑戦 アルケーアカデミー校庭の木陰で ここのところ暑い日が続いていたが、昨日降った雨のおかげで、木陰では少し涼しい風が吹き抜け、どうしようもなかった暑さが、どこか心地よい暑さに変わっていた。 想(ソウ)ちゃん: 今日は少し涼しいね。これぐらいなら、気持ちいい暑さだね。 思惟(シイ)ちゃん: そうね。涼しくていいわね。ものすごい暑さだったのも、今が気持ち良ければ忘れちゃうわね。 想ちゃん: そうだ!忘れちゃうといったら、温暖化の人類の対策、まだ先生に聞いてなかったや。 思惟ちゃん: 先生に聞きに行ってみましょうよ! アルケーアカデミー職員室 想ちゃん: 先生、この間の授業の続きをしてください。 AI先生: 地球温暖化の対策の件ですね。 思惟ちゃん: はい、そうです。 AI先生: よろしい。では、あなたたちはどうすれば良いと思いますか? 想ちゃん: え?うーんと…車に乗らないで歩くとか、電気を大事にするとかですかね? AI先生: それも大切ですが、もっと大きく物事をとらえなければなりません。 思惟ちゃん: 大きく? AI先生: では、元の問題に戻ってみましょう。地球温暖化はなぜ起こったのですか? 思惟ちゃん: 人類の経済活動が活発になって、化石燃料などを燃やして、二酸化炭素の濃度が上がった…そうか!どうやって二酸化炭素の濃度を上げないようにするかが対策なんですね。 AI先生: その通りです。人類の今の取り組みは、いかにしてCO₂を大気に放出しないようにするかを念頭に置いています。 二酸化炭素放出量削減の取り組み 低効率の化石燃料から高効率の化石燃料への移行 • 石炭や重油などの低効率燃料から、天然ガスや高効率石炭火力へ。 • コンバインドサイクル発電などの技術で、同じエネルギーでもCO₂排出量を減らすことが可能。 AI先生: エネルギーを使わないということはできません。だからこそ、同じCO₂排出でも、より多くのエネルギーを取り出せる方法へと移行しているのです。 思惟ちゃん: なるほど、効率を上げることで排出量を減らすのね。 二酸化炭素を放出しない取り組み 再生可能エネルギーの開発 • 太陽光や風力など、CO₂を排出しないクリーンなエネルギー。 • ただし、土地利用や廃棄物の問題もある。 AI先生: 現在のSi型太陽光発電は広い土地が必要で、森林...

AIエッセー:極めて悲観的な状況でも自分をあきらめないためにー第二回ー

前提①:日本の構造的欠陥は致命的であり、現行システムの持続は不可能である 日本の司法、政治、行政は、大戦後の清算の影響により、それぞれ根深い構造的欠陥を抱えている。そして残念ながら、その組織が作った制度自体もまた、同様の欠陥を引き継いでしまっている。これら国家レベルのシステム欠陥については今後の記事で詳述するが、今回は「個人の対策」に焦点を当てるため、私たちの生活に最も直結する「社会保障制度の限界」という具体的な欠陥について示していく。 社会保障制度の限界:高齢化に潜む「2つの山」 日本の公的健康保険は、住民票の登録さえあれば誰でも加入できるという非常に緩い条件で運営されている、世界有数の優れた制度だ。しかし、この仕組みは基本的に現役世代が負担する「社会保険料」によって成り立っている。結論から言えば、この制度は今後、確実に成立しなくなる。理由は言わずもがな、高齢化だ。 今後、日本の高齢化は毛色の違う「2つの山(ピーク)」を迎えることになる。 1. 第1の山:高齢者「数」のピーク【2043年】 まず、高齢者の絶対数(頭数)が最も多くなるのが2043年だ。このとき、65歳以上人口は約3,953万人に達し、歴史上の最高値(天井)を迎える。第2次ベビーブーム世代(団塊ジュニア)がすべて70代に突入し、日本の街中に最も高齢者が溢れ返る時期である。 ここを過ぎると、高齢者の死亡数が出生数を大きく上回り始めるため、高齢者の「人数」自体は減少に転じる。しかし、これで日本の高齢化問題が終わるわけではない。 2. 第2の山:高齢者「比率」のピーク【2070年代前半】 高齢者の人数が減り始めるにもかかわらず、総人口に占める「比率(高齢化率)」はその後も上がり続ける。なぜなら、それ以上に「現役世代と子どもの減少スピード(分母の縮小)」が激しすぎるからだ。 高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)の推移予測は以下の通りである。 2026年(現在): 約 29.5 % (約3.4人に1人が高齢者) 2043年(人数ピーク): 約 36.1 % 2050年: 約 37.9 % (約2.6人に1人が高齢者) 2070年(比率ピーク): 約 38.7 % (約2.5人に1人が高齢者) 最新の推計では、2070年頃に「38.7%」あたりでようやく上昇が止まり、ほぼ横ばいのプラトー(高原状態)...

AI Column: What Lies Beneath the Idea of “Gender Equality”

Is “Gender Equality” Truly a Pure Ideal? For a long time, we have accepted the phrase “gender equality” as a symbol of human rights. Yet, if we look beneath the surface, a different landscape emerges. 1. The Misalignment of Fairness and Equality We must first note that the word “fairness” carries different meanings across academic disciplines: - In economics, equity refers to the justice of resource allocation and redistribution. - In sociology, fairness refers to the social order and mutual recognition that allow people to coexist with minimal friction. In this essay, “fairness” is used in the latter sense—as a hypothetical concept of social rationality and stable order. It differs from the modern rights-based notion of fairness. From the perspective of general theories of social order, societies have always sought a “low-energy state” that minimizes friction. Pre-modern societies did not ideologically proclaim “equality,” yet they often built stable orders grounded in this sense of f...

第五十話:文字は二度発明された⁉ー表音文字と表意文字の秘密ー

アルケーアカデミー国語の授業 街の木々はいよいよ色合いの衣替えを終えようとしている。人々も衣替えを済ませ、寒さに肩をすぼめて歩いている。――文字もまた、時代ごとに衣替えをしてきたのだ。 教室の黒板には二列の表が描かれている。左には「表意文字」、右には「表音文字」と書かれ、それぞれの特徴が並んでいる。 AI先生:ひらがなとカタカナの誕生によって、日本独自の表音文字が生まれたことを理解してもらえましたか? 生徒たち:ハイっ! 想(ソウ)ちゃん(直感的に手を挙げる):先生、もしかして文字って二度発明されているの? AI先生:素晴らしい質問です。そうです。文字は二度、発明されています。最初は表意文字。紀元前3000年ごろメソポタミアで楔形文字、同じころエジプトでヒエログリフが使われていました。そして2000年後、紀元前1200年ごろにフェニキア文字が成立し、表音文字が誕生しました。 思惟(シイ)ちゃん(じっくり考えながら):どうして文字は二度発明される必要があったのかしら? AI先生:良い視点ですね。黒板の表を見てください。表意文字は意味と音を覚える必要があり、習得に時間がかかります。一方、表音文字は音を記号化するだけなので教育コストが低く、一般大衆に広まりました。表意文字はエリート層の文字、表音文字は大衆化した文字と言えるでしょう。 想ちゃん:確かに英語はアルファベットの並びだけで覚える量は少なくて済むね。 AI先生:その通りです。 思惟ちゃん:でも、日本では漢字を元にひらがなやカタカナを作ったのよね。世界では最初から表音文字の言語もあるのに、どうして漢字は生き残ったのかしら? AI先生:良い問いです。東洋の言語体系には同音異義語が多いという特徴があります。例えば「ホショウ」という音だけでは意味が分かりません。「保証」「補償」「保障」「歩哨」などがありますね。この場合、漢字が非常に有効なのです。 思惟ちゃん:中国語もそうなの? AI先生:はい、中国語も同音異義語が多いので漢字が役立ちます。 想ちゃん:へー、面白いね。 思惟ちゃん:じゃあ、韓国やベトナムが漢字をやめたのはどういう理由なの? AI先生:韓国やベトナムは漢字文化の権威との決別という意味で漢字を使うのをやめました。ベトナム語は声調言語なのでラテン文字+声調記号で音と意味を一対一で表記できます。韓国はハングルを導入...