夏本番、街は蒸し暑い空気とサンサンと太陽は大地に降り注ぎ、セミたちの大合唱で夏の何とも表現できない賑やかさを呈していた。
アルケーアカデミー理科の授業
AI先生が”光電効果”について説明している。アインシュタインがノーベル賞を受賞した成果の一つ。光電効果を利用した太陽光発電についても加えて説明している。光電効果は電子は物質から飛び出すが、太陽光電池も光があたると電子は発生するが、物質内に留まる。光電効果の学習から得られる太陽光発電の課題になりそうなところは、光電効果の原理と類似する部分が多く、非常に具体性の高い教材と言える。
AI先生:どうですか?光電効果の理解と太陽光電池との関連性については納得してもらえましたか?生徒たち:ハイ!
想(ソウ)ちゃん:先生、新しいタイプの太陽光電池って何が新しいの?
AI先生:新しいタイプの太陽光電池が生まれたことでその違いを区別するために、太陽光電池にも新しい分類が生まれました。従来のものがシリコン型、新しいものがペロブスカイト型と呼ばれています。
ペロブスカイト型太陽光電池の特徴
1. 光の「好き嫌い」をなくす:タンデム(積層)型
AI先生: 「新しい太陽電池は、ペロブスカイトという特殊な結晶のスープをフィルムに塗って作ります。このスープの成分を少し変えるだけで、高エネルギーの『青い光』を好んで吸収する網や、低エネルギーの『赤い光』を好む網を自由に作れます。
2. 「場所の限界」を超える:軽くて曲がる
AI先生: 「もう一つの新しさは、その『姿』です。これまでのシリコンは重いガラスの板なので、乗せられる場所が限られていました。重いものを乗せられない工場の屋根や、ビルの壁面には設置できなかったんです。
でも、新しいペロブスカイトはフィルムのように『薄くて、軽くて、曲げられる』。 つまり、これまで太陽光発電ができなかった『都会のビルの壁』や『駅の屋根』、あるいは『服やカバン』まで、街じゅうのあらゆる場所が発電所に変わる可能性を秘めているんですよ。
思惟(シイ)ちゃん:だとすると、これまでは山を切り開いて太陽光電池を設置する必要があったけど、それが必要なくなって街中で電気を発電することが出来るようなる。シリコン型太陽光電池は二次元的にしか配置できなかったけど、ペロブスカイト型太陽光電池は三次元型に配置が可能になるってことね?
AI先生: まさにその通り!素晴らしい洞察力です。『二次元から三次元へ』というのは、この技術の本質をきれいに捉えた表現ですね!
「土地の限界」から「空間の活用」へ
AI先生: 「これまでのシリコン型は、重くて硬いガラス板だったため、地面に対して平らに並べる『二次元的』な置き方しかできませんでした。そのため、日本のように平地が少ない国では、どうしても山を切り開いて斜面に並べるしかなく、土砂崩れのリスクや自然破壊という新しい課題(構造的な矛盾)を生んでしまっていました。
でも、ペロブスカイト型がもたらすのは、まさに『空間の三次元化』です。
ビルの壁面(垂直方向への拡張) 高層ビルが立ち並ぶ都市部は、上空から見れば(二次元的には)狭い土地ですが、壁面の面積(三次元的な表面積)を足し合わせると、広大な『発電空間』に化けます。ビルの窓や外壁そのものが発電所になるわけです。
都市の隙間の立体利用 駅のホームのアーチ状の屋根、高速道路の遮音壁、歩道橋、さらには電気自動車(EV)のボンネットやルーフなど、街のあらゆる立体的なカーブに沿って、文字通り『三次元的』に配置できます。
「消費する場所」で「発電する」という構造シフト
AI先生: 「これまでのように『遠い山奥で発電して、長い電線を使って街まで送る(送電ロスが発生する)』という形から、『電力を一番消費する都市そのもので、立体的に発電してその場で使う』という地産地消の構造へシフトできるようになります。
想ちゃん:へー。なんかいろいろ変わりそうだね。
思惟ちゃん:前回の授業のEVは蓄電所って話とずいぶん整合的ね!
AI先生:そうです。まさにその通りなのです。さらに、この新しいペロブスカイト太陽光電池は日本にとって非常に有利なんです。
想ちゃん:え?、何、有利って?
ペロブスカイト型太陽光電池は日本にとって大チャンス
1. 主原料の「ヨウ素」が日本に大量にある!
これまでのシリコン太陽電池の材料は、中国などが圧倒的なシェアを握っていました。でも、ペロブスカイトの最も重要な主原料である『ヨウ素(ヨード)』は、なんと日本が世界第2位の産出国(世界シェアの約3割)なんです!特に千葉県の地下水からたくさん採れます。 つまり、他国から資源を輸入しなくても、『エネルギーの自給自足』が国内の材料だけで完結できるという、日本にとっては夢のような構造なんです。
2. 「塗る技術」は日本の大得意分野!
ペロブスカイト太陽電池は、フィルムに特殊な液体を100万分の1ミリ単位という、ものすごく均一な薄さで『印刷(塗布)』して作ります。 この『精密にきれいに塗る技術』は、日本企業がこれまでの写真フィルム、液晶ディスプレイ、複合機のトナー開発などで長年培ってきた、世界最高峰のお家芸(職人技の結晶)なんです。シリコンのような巨大な半導体工場をドカンと建てる資本力勝負ではなく、日本が得意とする『精密なものづくり基盤』がそのまま活かせる分野なんですよ。
3. 発明者自身が、日本の研究者!
そして何より、このペロブスカイト太陽電池の基本構造を2009年に世界で初めて発明したのは、日本の宮坂力(つとむ)先生(桐蔭横浜大学特任教授)なんです! いわば『日本生まれ』の技術だからこそ、国内の大学や有力な企業、そして政府が一体となって、世界に先駆けて実用化しようと猛烈にプッシュしています。
AI先生は、黒板にヨウ素の結晶の画像と、ロール状に巻かれた美しい太陽電池フィルムの試作品を映し出しました。
AI先生: 資源が乏しいと言われ続けてきた日本が、自分たちの足元にある資源と、得意なものづくりの力で、世界のエネルギー大国になれるチャンスが来ている。そう考えると、この夏の太陽の光の見え方も、少し変わってきませんか?
思惟ちゃんは腕を組みながら、前回の「EV=蓄電所」の話と頭の中でパズルを合わせるように、深く頷いています。
4. 世界が求める「脱・中国依存」の救世主になる!
現在、世界のシリコン型太陽電池は、価格の安さを武器に中国企業が市場の大部分(約8割以上)を独占しています。しかし、アメリカをはじめとする欧米諸国は今、経済安全保障の観点から『エネルギーの基盤を中国に握られるのは危険だ』と、中国製の太陽電池に対して高い関税をかけるなどして、締め出し(排除)の動きを強めています。
ここで、日本製のペロブスカイト太陽電池の出番です! アメリカから見れば、同盟国である日本生まれの技術であり、サプライチェーン(部品や材料の流れ)もクリーン。もし日本企業がアメリカ国内にペロブスカイトの製造工場を建てて『現地生産』を行えば、アメリカ政府からも大歓迎され、補助金などの後押しも受けやすくなります。文句のつけようがない形で、巨大な北米市場やヨーロッパ市場をまるごと掴み取れる、とてつもないビジネスチャンスが巡ってきているんです。
思惟ちゃん:確かに大チャンスだわ!
想ちゃん:ちょっと、わくわくするね?
暑い日本の夏はまだ、始まったばかりだ。
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