先日、老後二千万円問題の本質について投稿した。この話題が社会的に大きく盛り上がった当時の空気を、私は今でもよく覚えている。しかし、正直に言えば、あの盛り上がりがまったく理解できなかった。老後に一定の資金が必要なのは当然であり、わざわざ騒ぐほどの話ではないからだ。
その後、新NISAが登場し、SNSやメディアは再び活況を呈した。そこでは、老後二千万円問題と新NISAが一続きの物語として語られているように見える。
――国は老後を支えきれない。だから自分で準備してほしい。そのために新NISAがある。
多くの人は、そう理解しているだろう。しかし、結論から言えば、この二つは構造的につながっていない。いや、つながりようがない。なぜそう言い切れるのか。その話をしよう。
老後二千万円問題の本質は「老後」ではなく「現役期の家計構造」にある
老後二千万円問題の本質は、「退職金が老後資金として残らない可能性が高い層」が想定されている点にある。
その最大の理由は、退職金が住宅ローンの残債処理に消えるからだ。かつて住宅ローンは25年が主流だった。25歳で家を買えば50歳で完済し、退職金は丸々老後資金になった。しかし、バブル崩壊後の長期低金利と、住宅価格と可処分所得の乖離が改善しなかった結果、ローン期間は35年が当たり前になった。
25年ローン時代(1990年代)
25歳で購入 → 50歳で完済
退職金は老後資金
老後資金不足は“例外”
25歳で購入 → 50歳で完済
退職金は老後資金
老後資金不足は“例外”
35年ローン時代(2000年代以降)
35歳で購入 → 70歳で完済
退職金は残債処理で消える
老後資金不足は“構造的に必然”
つまり、老後資産が不足する家庭とは、主に35年ローンを組んだ家庭である。老後二千万円問題とは、老後の話ではなく、ローン期間が長期化した家計構造の問題なのだ。新NISAは「老後二千万円問題の解決策」ではない新NISAは誰でも利用できる制度だが、
目的も対象も一致していない。
35歳で購入 → 70歳で完済
退職金は残債処理で消える
老後資金不足は“構造的に必然”
つまり、老後資産が不足する家庭とは、主に35年ローンを組んだ家庭である。老後二千万円問題とは、老後の話ではなく、ローン期間が長期化した家計構造の問題なのだ。新NISAは「老後二千万円問題の解決策」ではない新NISAは誰でも利用できる制度だが、
老後二千万円問題と因果関係はない。
老後二千万円問題:退職金が残らない家計構造の問題
新NISA:長期投資の税制優遇制度目的も対象も一致していない。
両者を「国が老後を支えられないからNISAを作った」という物語でつなげるのは誤りだ。
35年ローンと新NISAを同時に行うことの“構造的な危険”
ローンを返済しながら新NISAで投資するということは、平たく言えば借金をしながら投資するという構図だ。投資の世界ではレバレッジと呼ばれる。レバレッジは、低い金利で借りて、高い利回りで運用する という構造が成立しているときにのみ有利だ。しかし、現在のような金利上昇局面では、
35年ローンと新NISAを同時に行うことの“構造的な危険”
ローンを返済しながら新NISAで投資するということは、平たく言えば借金をしながら投資するという構図だ。投資の世界ではレバレッジと呼ばれる。レバレッジは、低い金利で借りて、高い利回りで運用する という構造が成立しているときにのみ有利だ。しかし、現在のような金利上昇局面では、
投資利回り > ローン金利 → 成立
投資利回り < ローン金利 → 崩壊
という逆転が起こり得る。
さらに、35年ローンの多くは変動金利である。つまり、35年ローン+新NISAは、
さらに、35年ローンの多くは変動金利である。つまり、35年ローン+新NISAは、
「金利上昇に弱い家計」+「価格変動に弱い投資」
という二重リスクを抱える構造になる。金融リテラシーが高くない状態でこの構造に入るのは危険だ。では、どうすればよいのかここまでの議論を踏まえると、行動指針は次のように整理できる。
若い時期に新NISAを活用し、住宅購入時の頭金を厚くする
→ 35年ローンを避けるための戦略として最も合理的。
→ 35年ローンを避けるための戦略として最も合理的。
すでに35年ローンを組んだ人は、投資より繰上返済を優先する
→ 金利上昇局面では“確実なリターン”になる。
生活防衛資金(半年〜1年分)を確保してから投資を始める
→ これだけで投資の失敗確率は大きく下がる。
→ 金利上昇局面では“確実なリターン”になる。
生活防衛資金(半年〜1年分)を確保してから投資を始める
→ これだけで投資の失敗確率は大きく下がる。
老後に向けた投資は、残り期間で低リスク商品を中心に運用すれば十分間に合うつまり、老後二千万円問題と新NISAの正しい関係はこうだ。
老後二千万円問題は「35年ローンという家計構造の問題」であり、新NISAは「長期投資の税制優遇」である。この二つは本来つながっていない。つなげて語られているのは、単なる“物語化”にすぎない。
むしろ、35年ローンと新NISAを同時に行うことは、家計にレバレッジをかける行為であり、金利上昇局面では危険性が高い。
まとめ
老後二千万円問題は老後の問題ではない。現役期の家計構造、特に35年ローンという長期債務構造が生み出した必然だ。新NISAはその問題を解決するために作られた制度ではない。むしろ、35年ローンと新NISAを同時に行うことは、家計にレバレッジをかける行為であり、金利上昇局面では危険性が高い。
最も健全な行動は、
頭金を厚くして35年ローンを避けるか、すでに組んだ場合は繰上返済を優先すること
である。そのうえで、生活防衛資金を確保し、残り期間で低リスク運用を行えば、老後資金は十分に準備できる。
頭金を厚くして35年ローンを避けるか、すでに組んだ場合は繰上返済を優先すること
である。そのうえで、生活防衛資金を確保し、残り期間で低リスク運用を行えば、老後資金は十分に準備できる。
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