日本は1945年の敗戦後、帝国の後始末に追われた。諸外国への清算完了は31年の時間を要した。偶然だが、私の生まれた年も1976年。この記事を書いているとこの年に生まれたことに何らかの運命を感じる。
◆ 1. 1945〜1951:帝国の崩壊と「財産放棄」
● 1945年:敗戦
日本は海外領土の95%を喪失。満州・朝鮮・台湾・南洋群島・中国本土の資産はすべて失われる。
● 1946〜1949年:海外資産の全面放棄
GHQの指令により、日本企業・個人の海外資産は全没収。これが実質的な「第一次清算」。
◆ 2. 1951〜1956:サンフランシスコ講和条約と賠償開始
● 1951年:講和条約
日本は以下を約束:
戦争賠償の支払い
請求権の放棄
平和条約締結国への経済協力
● 1954〜1956年:賠償支払い開始
フィリピン、ビルマ、インドネシアなどへ賠償が始まる。
賠償は現金ではなく、日本企業によるインフラ建設(賠償工事)が中心。
◆ 3. 1957〜1972:アジア諸国との賠償・経済協力のピーク
この時期が海外清算の本体。
● 主な賠償・経済協力
ビルマ(ミャンマー):7200万ドル
フィリピン:5億5000万ドル
インドネシア:2億2300万ドル
南ベトナム:3900万ドル
ラオス・カンボジア:小規模協力
韓国(1965年):5億ドル(賠償ではなく「経済協力」名目)
これらはすべて、日本の外貨不足の中で行われた巨大負担。
● 1972年:日中国交正常化
中国は賠償請求権を放棄。 これが海外清算の大きな転換点。
◆ 4. 1976年:ベトナム向け経済協力で「海外清算が終わる」
1975年:南北ベトナム統一 1976年:日本はベトナムに対し戦後処理としての経済協力を実施。
これが、戦争に起因する最後の海外清算とされる。
つまり:1945〜1976年の31年間が、日本の「海外清算期」。
1976年のベトナムへの経済協力という名の最後の清算が終わった。つまり、国の大戦の負債を返し終えたように見えた時期であった。この海外における借金、目に見える負債を返し終わったと言える。以前、投稿した性善説ベースの護送船団方式経済が最も成功した理由がこの時、無くなったといえる。疑似的に成立していた。人は基本的に善であるという状態を維持できた理由がこの借金であったとすると、この年以降の日本の戦後の性善説ベースの制度破綻が次々顔を出す。人は考える余裕がない場合、考えることはせず、年長者や上役、お上の指示に従順に従う疑似的な善の状態を維持できる。しかし、借金返済が終わると少し余裕が出てくるので考える余裕が出てくると、人を出し抜き、利得を得ようとする知恵を持つ人間の側面が発露する。このとき、性善説ベースの制度では対応できない性悪説ベースの制度への移行が必要であった。しかし、当時、なかなかすっと変更することは難しかっただろうことが容易に想像がつく。
次に1976年以降に発生した多くの人が聞いたことのある事件についてみていこう。
海外清算が終わった後の性善説ベース制度の崩壊
◆ ロッキード事件(1976)
抜け穴:政治家の裁量に対するチェックが存在しない
航空機の選定権限が政治家に集中
運輸省・防衛庁の意思決定がブラックボックス
資金の流れを追跡する仕組みがない
性善説ベースの制度では「政治家は国益のために判断する」と信じていた。 → その前提が破られた瞬間、巨額の賄賂が流れ込んだ。
◆ リクルート事件(1988)
抜け穴:未公開株の譲渡に対する規制が存在しない
未公開株を政治家に配っても違法ではなかった
官僚・政治家の利益相反チェックが存在しない
収支報告制度がザル
性善説ベースの制度では「政治家は株をもらっても公正に判断する」と信じていた。 → その前提が破られた。
◆ 東京佐川急便事件(1992)
抜け穴:政治献金の監視がほぼ機能していない
企業献金の透明性がゼロ
金丸信のような大物政治家への献金が事実上野放し
監督官庁(大蔵省)のチェックが機能しない
性善説ベースの制度では「政治家は献金を受けても政策を歪めない」と信じていた。 → 破られた。
◆ グリーンピア問題(1990s〜)
抜け穴:行政裁量の巨大化+事業評価の欠如
厚生省が年金資金を自由に使える構造
事業評価・監査が存在しない
利益相反のチェックがない
性善説ベースの制度では「官僚は国民のために最適な投資をする」と信じていた。 → 破られた。
どうだろう?海外の清算が完了した直後から性善説ベースの制度がうまくいかなくなった。それは、今考えれば当然の帰結だ。海外の清算を終え、余裕が出てくれば、必ず人は知恵を使う。知恵を使って正当に利益を上げるのならば、問題ないが、グレー領域を利用して利益を得ようとした結果といえる。これ以外にも戦後の性善説ベースの制度が海外清算の完了を契機とした変更がなされなかったひどい事案もある。そして、筆者は冒頭から海外での清算とずっと強調しているが、これは国内清算が完了していないことを示唆している。次回以降、国内清算について述べていこうと思う。
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